憲法三十条により国民全員に納税の義務が定められています。
さらに、税法の規定によって、所得税や法人税、消費税などの納税額の算出など細かく定められています。
これに応じて、税務当局は、納税者に対して、税務調査に関する質問や調査をする権限、「質問検査権」を行使して税務調査が行われます。
税務調査に入られた場合、迅速な対応と専門家の意見を聞くことが重要です。
ここでは、税務調査に入られた場合の対応について、解説していきます。
税務署から「調査に行きたい」と電話があったら、必ず次の点を確認します。
日時 | 何月何日に調査があるかを聞き出す。 |
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場所 | 調査する場所が、本社なのか、工場なのか、支店・営業所なのか |
調査の種類 | 一般調査か反面調査か |
調査の理由 | どんな理由で調査を行うのか |
担当調査官の所属部門・氏名及び人数 | 所属部門で調査態様がわかる。特別調査か一般調査か判断できる |
調査予定日数 | どの程度の調査かを予想できる |
調査対象年度 | どの会計年度の調査か分かれば、対応策がたてやすい |
そして、すぐに税理士に連絡し、調査当日の対応のためのリハーサル日程を調整します。
税理士と調整ができなければ、調査日を伸ばしてもらうことです。
できるだけ日程を調整して、その間に税理士と税務調査に対する打合せやリハーサルをすることです。
そのためにも、きちんとリハーサルができる税理士を選ぶことも必要です。
税務署は原則として、調査対象者に対して、あらかじめいつ税務調査に行くかを連絡しますが、それは事前に連絡しても調査に支障がないときに限られます。
つまり、連絡をしたために、調査日までに資料の隠蔽や工作などをされては困るためです。
ですから、「支障がある」とみなされた場合には、事前の連絡もなく、突然抜打ちに調査をされます。
ただ、調査は任意であり、無予告調査も正当な理由があれば断ることもできますが、一般調査と同様「受忍義務」があり、断ることはできないとなっているのです。
なお、無予告調査の割合は全調査の5%くらいで、さほど多くはありません。
無予告調査での注意すべき応対方法は以下のとおりです。
一般の税務調査では、連絡から実施までに通常10日から2週間ぐらいの余裕があるものです。
その間に、できるだけ手を尽くしておきたいものです。
多くの場合、過去3期にまでさかのぼることが多いので、その3期について整備されていない事項や、不十分な処理しかしてない事項があれば、すべてを整理しておきたいところです。
是非やっておきたいのが以下の順になります。
また、その他に事前に確認しておくべき事項としては以下のものが挙げられます。
税務調査に際して、通常は税理士に立会ってもらいます。
しかし、調査を受けるのはあくまでも会社、個人事業者なのです。
すなわち、直接調査官に対応することになるのは、経営者や経理担当者です。
税理士は、税務代理や、税務書類の作成を業務としていますが、税務調査にあたっては、基本的には中心的に受け答えすることはできません。
社内的には次のような体制を整えておくとよいでしょう。
・ 納品書
・ 領収書の控え
・ 請求書
・ 工事契約書
・ 総勘定元帳
・ 入出金伝票
・ 小切手の控え
・ 売掛帳、買掛帳(3期分)
・ 稟議書
・ 議事録
・ 同族関係者との取引
・ 賃貸借契約書
・ タイムカード
・ 出勤簿
・ 扶養控除申告書
・ 役員報酬改定の議事録
・ 社会保険関係の書類
・ 請求書
・ 納品書
・ 在庫表(原始記録)
・ 当日の現金残高
調査官は、税務調査を行うときには身分証明書を携帯し、調査先などで求められれば提示しなければならないと税法で義務付けられています。
ですから、税務調査に際しては、調査官の身分証明書の提示を受け、身分を確認することからスタートさせます。
一般の税務調査では事前に連絡が入りますが、特に無予告調査のときは、きちんと身分証明書の確認が必要です。
税務調査には大きく分けて3つの目的があります。
税務調査を行う際には、調査官はどのような目的による調査なのかを示す必要があります。ですから、税務調査が入ったら、具体的な調査内容の説明を受けてから調査に入ってもらうことです。
実地調査は、まずは挨拶から始まって、会社の概要の説明を求められたりします。
とにかく誠意を見せ、力まず、できる範囲で応じるようにしましょう。
会社概要の説明は、経営者か、決定権のある人が行うべきでしょう。
業界について、売上や仕入についてできるだけ長い時間をとりましょう。
そのために何を話すかあらかじめ考えておいたほうがいいでしょう。以下にポイントを記します。
調査官は申告ミスや申告漏れを指摘するために、わずかなミスでも見逃さないよう様々な調査手法を用います。
比較分析では、調べようとする項目(数字)について前期と当期あるいは標準値と比較することで問題点を洗い出し、さらに帳簿と領収書などの証憑類を突き合わせる(証憑突合)ことで事実確認を行い整合性を見ます。
また、帳簿や明細表などの計算が正しいかどうかをチェックしたり(計算突合)、帳簿をお互いに突き合わせ(帳簿突合)、正しい申告であったかを確かめます。
そのほかには以下のようなものがあります。
税務調査が行われている間、問題点や疑問点があれば、その都度調査官のほうから指摘されます。
しかし、調査官は、その場では自分の意見を表明したり、ましてや結論を示すことはしません。
調査経過を税務署に持ち帰ります。
調査官は、その日の調査を終えて税務署に持ち帰ると、上司である統括官に報告して、問題となる事項については指示を受けて検討に入ります。
統括調査官の指示によって調査範囲を広げたり新たに調査項目を増やしたりします。
税務調査ではいくつかの問題点が指摘されますが、それらを受け入れずに長く対立していると解決に至りません。
場合によっては一部を認めるという一種の妥協を行って、調査を終了に導くことが必要となることもあります。
実地調査では、調査官は何らかの指摘をすることを目的としているわけですから、指摘を受けたときの対応を検討しておくことが大切です。
ポイントとしては次の項目別に対処すればよいと考えられます。
「修正申告」とは法人税や所得税、相続税、消費税などの申告書の内容に誤りがあって、納税額が過少であった場合に、納税者自ら正しい申告に修正する手続きのことをいいます。
「更正処分」は、納税者が修正申告に応じない場合、税務署としての職権によって行う手続きです。
税務署としては、「更正」にせず、できるだけ「修正申告」を勧めてきます。
その理由は、「修正申告」を行うと、本税に対して「不服申立て」ができなくなるからです。
つまり「修正申告」は、納税者が過ちを認めたことになり、その後争うことができなくなります。
これに対して「更正」の場合は「不服申立て」の手続きがとれます。
したがって、調査官が「調査を終わらせるので修正申告に応じてください」と求めることになるのです。
延滞税の額は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じ、次により計算した金額の合計額となります。
税務調査において、一般の納税者がプロである調査官と対等に渡り合うことは困難です。
ですから、第一に納税者の味方になってくれ、信頼できる税理士を探すことが重要です。
信頼できる税理士とは、税務調査の際に納税者のために尽力してくれる税理士であり、調査官の指摘に正当な見解で対応してくれて、しかも、できる限り追徴税額が少なくなるように対策を練ってくれる税理士なのです。
調査官の指摘する問題点について納税者がうまく対応できるように補佐してくれれば、調査を早く終わらせることができますし、当然追徴税額を少なくすることができるのです。
このように税務調査における税理士の返答の仕方や対応いかんで調査の進行や結果に大きく影響してきますし、日ごろから、いつ税務調査が入っても問題を指摘されないような記帳や税務処理を行うように助言し、安全な方向にリードする役割があります。